大判例

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名古屋高等裁判所 昭和27年(う)637号 判決

記録を調査するのに、起訴状記載の公訴事実が刑法第百八条第一項の放火罪の未遂であり、原判決認定の事実が同法第百十条の放火罪の既遂であることは所論の通りである。そして原審においては、検察官からは脅迫罪としての訴因罰条の予備的追加が為された以外は、刑法第百十条の放火罪としての訴因、罰条に関する追加、変更等はこれが為された形跡がない。そこで所論の当否を按ずるのに、公訴事実と原判決認定の事実を照し合せてみると、その外形の事実関係は全く同一と認められるのであつて、たゞ犯意の点につき前者は家屋焼毀の意図があるとするに対し、後者はこれを欠き単に小障子、木箱を焼毀しようとする意思があつたに過ぎないと認定した点において相違があり、その結果罰条の適用を異にするに到つたものであることが推認される、蓋し刑法第百八条の罪と同法第百十条の罪とは等しく放火罪ではあるが、その構成要件を異にすることは所論の通りであり従つてその訴因も相違してくることは当然である。しかしながら本件の場合について前記の犯意に関する二個の訴因を本質的に解剖してみると、原判決が認定した犯意は、たゞ小障子、木箱を焼毀しようとするにあつて、家屋までも焼毀し、またはこれを焼毀することに対する認識は存在しないというのであるから、帰するところ公訴事実のいう犯意の範囲内において、より軽い犯意を認定したものということができる、してみれば、所論の両訴因(犯意)は本質的には別個のものとは考えられないのである。されば検察官が原審において刑法第百十条の放火罪としての訴因、罰条の追加変更等をしなかつたとしても被告人の防禦権に支障を来したものとは認めなれない。従つて原判決が被告人の犯意を前記のように認定しその所為を刑法第百十条の放火罪として処断したことを非難し所論の審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたものということはできない。論旨は理由がない。

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